併存疾患がある場合の緑内障の管理
この研究は、治療薬の使用に際し細心の注意が必要な特定の併存疾患のある緑内障患者に対して使用された推奨薬剤の詳細と、関連する有害事象とのエビデンスの究明を目的として実施されました。
分析手法は、行政機関に申し出のあったデータと処方薬/事象シーケンスの対称解析からの後ろ向き同世代分析という手法をとっています。
研究参加者は、緑内障治療のための点眼薬を処方されたオーストラリアの政府復員軍人省治療カード所有者です。
主要転帰尺度は、在郷軍人の緑内障と糖尿病、気道疾患(喘息、COPD等)、心不全、虚血性心疾患、あるいは、うつ病、処方された慎重な使用が必要な緑内障治療点眼薬の割合です。
有害事象については、気道疾患、心臓疾患による入院を転帰尺度としました。
結果は、以下のとおりです。
この同世代分析には、25,984人の在郷軍人が含まれました。
これらのうち、気道疾患のある患者の88%が、気道疾患を悪化させる可能性のある緑内障点眼薬を処方されており、心不全のある患者の43%が、ベータ遮断薬点眼薬を処方され、うつ病のある患者の49%が、うつ病がある場合には注意して使用すべき緑内障治療点眼薬を受け取っていました。
この研究により、チモロール (調整後順序比(ASR)1.48、99%CI 1.22-1.78)およびラタノプロスト投与の開始(ASR 1.24, 99% CI 1.11-1.38)に続く、ベータ刺激薬の吸入開始のリスクの増加が明らかになりました。
また、吸入ステロイド開始のリスクの増加がチモロール投与開始に続いていることも明らかになりました(ASR 1.43、99%のCI 1.13-1.81)。
チモロール投与開始(ASR 1.24、99%のCI 1.07-1.43)とラタノプロスト投与開始(ASR 1.16、99%のCI 1.03-1.31)に続いて、抗うつ薬投与の開始のリスクの増加が見られました。
チモロール開始に続く徐脈による入院のリスクは、さらに増加しました(ASR 2.22、99%のCI 1.15-4.31)。
そして、以下のように結んでいます。
細心の注意が必要な併存疾患がある場合に使用が推奨されている緑内障治療点眼薬の使用は、一般的であり、かつ、有害な結果に関連していました。
併存疾患の認識は、緑内障点眼薬の選択および処方の際に必要です。
とはいえ、これは、オーストラリアでの話であり、国民皆保険の日本では、保険適応となっている薬剤の中から最適な薬剤を選択することができます。
ただ、複数の疾患が有り、複数の医院に通っている方は、それぞれの主治医に、他の疾患の治療の現状を正確に伝えるようにしてください。
引用文献:Managing glaucoma in those with co-morbidity: not as easy as it seems.
Roughead EE, Kalisch LM, Pratt NL, Killer G, Barnard A, Gilbert AL.
Ophthalmic Epidemiol. 2012 Apr;19(2):74-82. doi: 10.3109/09286586.2011.638743. Epub 2012 Feb 24.