うつ病を併発する緑内障患者のアイ・ケアのアドヒアランス
うつ病の併発は、慢性疾患のある患者に共通して薬物療法のアドヒアランス不良に重要な役割を果たすかもしれません。
また、緑内障は、薬物療法に一生関わり続けることが求められる、失明に至る可能性のある慢性疾患です。
緑内障治療を着実に実行することに失敗することは、疾患の進行と視力喪失に結びつくかもしれません。
このような背景から、今回ご紹介する研究は、緑内障患者における抑うつ症状の保有率とこれらの症状とアドヒアランス不良、緑内障治療との間の関連性を評価するために実施されました。
この横断観察研究では、薬物療法のアドヒアランスが、Morisky Medication Adherence (MMA)質問用紙 (8つの質問)(※1)で評価されました。
うつ病のスクリーニングは、CES-D(Center for Epidemiologic Studies Depression scale)を用いて行なわれ、うつ病と緑内障治療薬点眼順守率の関連性が解析されました。
結果は、以下のとおりです。
この研究には76人の緑内障患者が含まれており、19.7%の被験者はアドヒアランス不良(Moriskyカットオフ値10)に分類され、また、21.1%はうつ病に悩まされていました(CES-Dカットオフ値16以上)。
うつ病の緑内障患者とうつ病ではない緑内障患者を比較した時、アドヒアランス不良は同じ水準でした。
しかしながら、うつ病の程度とアドヒアランス不良の程度(P=0.04)の間で相関性が観察されました。
この研究によって、緑内障患者のうつ病の有病率は、一般的なイスラエル人集団のうつ病の有病率が同じ水準であることが、また、うつ病の存在は、アドヒアランス不良の存在に関係していなかったものの、うつ病の程度は、アドヒアランス不良の程度に関係していることが明らかになりました。
もちろん、この研究も海外での研究ですが、うつ病の悪化は、緑内障治療のアドヒアランスにも影響がある可能性があると思われます。緑内障の患者さんは、緑内障の治療を確実なものとするためにも、気分が沈んだ状態等が二週間以上続くようであれば、早めの専門医の受診をお勧めいたします。
※1:Morisky Medication Adherence (MMA)質問用紙 (8つの質問)(※1)
Morisky Medication Adherence Scale(MMAS)というアドヒアランスを評価するための指標で使う質問用紙のこと。MMASは、服薬行動に関する4つの質問で構成されていますが、ここでは、8つの質問とありますので、この研究で使用された指標は、Modified MMASだと思われます。
引用文献:Compliance with eye care in glaucoma patients with comorbid depression.
Weiss GA, Goldich Y, Bartov E, Burgansky-Eliash Z.
Isr Med Assoc J. 2011 Dec;13(12):730-4.