原発性開放隅角緑内障患者における24時間眼圧に対する高度近視の影響

今回ご紹介する研究は、眼圧(IOP)およびIOPの変動が緑内障の危険要因であることは知られており、これらの眼のパラメーターに対する高度近視の影響を理解することは重要であることから、高度近視を有する原発開放隅角緑内障(POAG)患者が、24時間の安静時に、より高いIOPとより大きなIOPの変動を示すかどうかを調査することを目的とした、前向きコントロール臨床研究です。

プロスタグランジン点眼薬のみ使用している82人の中国人の高眼圧POAG患者の82眼が、2つの近視の等級のグループ(屈折度数(※1)が-6.0 以下のグループ, n = 27と屈折度数が-0.76 から -5.99 の間のグループ, n = 33)と近視のないグループ(屈折度数が-0.75~0.75,n=22)の3つのグループに分けられました。

それぞれのグループにおいて、単回IOP(午前10時)、補正された24時間IOP、補正された夜間IOP、24時間のIOP変動および午前10時、午後2時、午後6時、午後10時、午前2時、午前6時、午前8時のIOPが測定されました。

結果は、3つのグループの中で高度近視を有するPOAG患者群のみが、他群よりIOPが高いというものでした。
上昇したIOP値は、午前10時の単回IOPで0.65 mmHg、補正された24時間IOPで0.84 mmHg、補正された夜間IOPで0.97 mmHgでした。
一方、24時間のIOP変動は、非近視グループより2つの近視グループにおいて、より少ないという結果でした。

さらに、反復測定分散分析を用いて分析したところ、1日に7回測定されたIOPに関してグループ間に統計的有意性はありませんでした(P=0.77)。また、それぞれのグループと測定時間の間に相互関係はありませんでした(P=0.71)。しかし、同一グループ中の1日に7回測定されたIOPの違いは、統計的に有意でした(P=0.01)。

この研究は、中国人を対象とした研究ですので、そのまま日本人に当てはめることはできませんが、近視を併発するPOAGの患者さんにおいては、一般的にPOAGの患者さんで大きいと言われる眼圧の変動幅は、小さいようです。しかしながら、高度近視を有するPOAGの患者さんでは、緑内障の薬物療法を実施しても、より高い眼圧が続くことから、より注意をする必要があるでしょう。

いずれにしても、緑内障と診断された場合、主治医の指示に従って定期的な受診をお勧めいたします。

※1:屈折度数
主に眼鏡用のレンズの屈折度の単位のことです。ここでは屈折度数と記載しましたが、通常、DまたはDptrという記号で表します。

引用文献:
Effect of high myopia on 24-hour intraocular pressure in patients with primary open-angle glaucoma.
Yang YX, Wang NL, Wu L, Zhen Y, Wang T, Ren CX, Peng XX, Hao J, Xia YT.
Chin Med J (Engl). 2012 Apr;125(7):1282-6.