慢性腎不全(CRF)患者における眼疾患(緑内障、白内障等)併発リスク増加

慢性腎不全に苦しむ患者に併発する眼科疾患に関する大規模地域住民をベースにした研究について、十分な論文がそろっているとはいえません。

そこで、今回ご紹介する研究では、慢性腎不全患者における特定の眼科的並存疾患(網膜疾患、ぶどう膜炎、緑内障、白内障およびドライアイ)の有病率および危険性が研究されました。

データは台湾長期健康保険データベースから供給され、9,149人の慢性腎不全患者が研究群に含まれ、27,447人の比較群(40-98歳)患者が対応群とされました。

そして、慢性腎不全患者と慢性腎不全でない患者の網膜疾患、ぶどう膜炎、緑内障、白内障およびドライアイの有病率が算出されました。

解析は、性別、年齢群、糖尿病、高血圧症、月収、地理的地域、および患者の住む地域の都市化のレベルを考慮した後、条件付ロジスティック回帰分析(※1)によって、慢性腎不全患者と慢性腎不全でない患者との眼科疾患の危険性が比較されました。

結果は、以下のとおりです。
・慢性腎不全患者は、慢性腎不全でない患者と比べて、網膜疾患(16.62% vs. 9.70%)、ぶどう膜炎(1.38% vs. 0.95%)、緑内障(7.56% vs. 5.70%)および白内障(33.08% vs. 28.90%)で、有意に高い罹患率でした(すべてp<0.001)。
・しかしながら、これらの2つの群間で、ドライアイの有病率に有意差は見られませんでした。
・潜在的交絡因子(※2)を調整した後の慢性腎不全患者と慢性腎不全でない患者とを比べたオッズ比(※3)は、網膜疾患(オッズ比(OR), 1.84、95%信頼区間, CI, 1.72-1.98)、ぶどう膜炎(OR,1.33,95%CI 1.07-1.66)、緑内障(OR 1.35, 95% CI 1.23-1.48)および白内障(OR 1.24, 95% CI 1.18-1.31)と、より高いものでした。

つまり、慢性腎不全患者は、慢性腎不全でない患者と比較して、網膜疾患、ぶどう膜炎、緑内障および白内障の罹患率が有意に高かったという結論を出しています。

慢性腎不全の患者さんは、網膜疾患、ぶどう膜炎、緑内障、白内障の早期発見のためにも、定期的な眼科の受診をすることをお勧めいたします。


※1:条件付ロジスティック回帰分析
発生確率を予測する手法のことです。

※2:潜在的交絡因子
「トピラマート服用に伴う緑内障発症のリスク」の脚注をご参照ください

※3:オッズ比
「開放遇角緑内障の危険因子としての近視」の脚注をご参照ください

引用文献:Increased risk of co-morbid eye disease in patients with chronic renal failure: a population-based study.
Wang TJ, Wu CK, Hu CC, Keller JJ, Lin HC.
Ophthalmic Epidemiol. 2012 Jun;19(3):137-43. doi: 10.3109/09286586.2012.680531.