新たに開放隅角緑内障と診断された患者における薬物療法とレーザー線維柱帯形成術の費用対効果の比較

今回ご紹介する研究は、経過観察のみ、プロスタグランジン誘導体(PGAs)点眼薬による一般的な治療、レーザー線維柱帯形成術(LTP)治療を対象に、新たに軽症開放隅角緑内障と診断された患者に対する最もコスト効率の良い治療選択枝を決定することを目的として実施され、PGAs、LTPと経過観察のみ、それぞれの場合における増分費用対効果(※1)が比較されました。

結果は、以下のとおりです。
未治療群を対象として質調整生存年(※2)で調整したLTPの増分費用対効果は、$16,824でした。
それに比べて、未治療群を対象として質調整生存年で調整したPGAsの増分費用対効果は$14,179で、LTPと比べてより大きな健康関連QOLをもたらしましたが、もし、患者のアドヒアランス(※3)が悪く、PGAsの効果が25%悪い場合は、LTPの方がより高い効果をもたらしました。

つまり、プロスタグランジン誘導体とLTPは、両方とも新たに軽症開放隅角緑内障と診断された患者の管理におけるコスト効率の良い選択肢であり、もし、最適な服薬アドヒアランスが担保されれば、LTPに比べてPGAsの方が、より大きな効果が得られることになります。
しかしながら、より現実的なレベルの服薬アドヒアランス(臨床試験で報告されている効果より25%効果が悪くなる)を仮定した場合、現在のPGAでかかる費用よりLTPの方がコスト効率の良い選択肢となるかもしれないということです。

緑内障と診断されて点眼薬を処方された場合は、より高い費用対効果を得るためにも医師、薬剤師の指示通り点眼してください。


※1:増分費用対効果
新しい薬剤や治療法を用いることによって、従来の薬剤や治療法と比べて増加した費用を治療効果等の増加分で割ったものです。

※2:質調整生存年
生活の質で調整した生存年のことです。

※3:アドヒアランス
患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることです。


引用文献:
Cost-effectiveness of medications compared with laser trabeculoplasty in patients with newly diagnosed open-angle glaucoma.
Stein JD, Kim DD, Peck WW, Giannetti SM, Hutton DW.
Arch Ophthalmol. 2012 Apr;130(4):497-505. Epub 2012 Feb 13.