乳頭周囲βゾーン網脈絡膜萎縮のスペクトラルドメイン光干渉断層撮影像(SD- OCT) ~近視と緑内障の影響~

今回ご紹介する研究は、日本人研究者を中心とした研究です。
この研究は、SD-OCT(※1)を利用して、乳頭周囲βゾーン網脈絡膜萎縮(PPA-β)断面の形状に対する緑内障と近視の影響を調査するため、実施されました。

SD-OCTで得られたPPA-βの断面のB走査像を、眼圧のレベルにかかわらず、原発開放隅角緑内障(POAG)の連続した100人の患者の100眼と100人の健常者の100眼で評価し、PPA層の形状が分類され、また、関連する要素は、多変量解析で研究されました。

研究の結果は、以下のとおりでした。
147眼のPPA-β(84眼のPOAGおよび63眼の正常眼; P=0.0012)で、PPA層は直線のブルッフ膜(BM)(※2)(14眼のPOAGおよび27眼の正常眼)もしくは下方へ曲がったBM (19眼および8眼)、あるいはBMを欠く下方へ曲がる傾斜からなっていました(BM欠損; 51眼および28眼)。

多変量解析において、POAGがないこと(オッズ比0.36;P=0.034)と軽い近視性屈折障害(オッズ比1.43; P=0.009)が直線のBMタイプと有意に関連し、POAGの存在(オッズ比5.74; P=0.008)と軽い近視性屈折障害(オッズ比3.02;P<0.001)が、曲がったBMタイプと関連すること、そして、近視性屈折障害(オッズ比0.34;P<0.001)とBM欠損タイプが関連していることを明らかにされました。

PPA-β領域内において、神経線維層を除いたすべての網膜層は、POAGと正常眼の集団間に違い(P>0.05)はなく、視神経乳頭端に達する前に高い頻度で消えていました。

そして、以下のように結んでいます。
SD-OCTによって検出されたPPA層の配置は、3つのタイプに分類されました。
PPA層上のBM欠損は、近視と緊密に関連していました。
下方へ曲がったBMの出現は、緑内障に関連した解剖学的変化と関係があるかもしれない。

今回は、少々専門的な研究のご紹介となりましたが、近視と原発開放隅角緑内障のβゾーン乳頭周囲網脈絡膜萎縮のタイプについて、解剖学的な違いがあるものの、近視の方は、眼圧が高くなくても視野が狭くなるリスクが高いと考えられますので、定期的に視野検査をすることをお勧めいたします。


※1:スペクトラルドメイン光干渉断層撮影
光の干渉性(コヒーレンス)を利用して、物体内部の様子を撮像する技術のひとつです。

※2:ブルッフ膜
脈絡膜と網膜色素上皮を隔てる膜のことです。

引用文献:Spectral-domain optical coherence tomography of β-zone peripapillary atrophy: influence of myopia and glaucoma.
Hayashi K, Tomidokoro A, Lee KY, Konno S, Saito H, Mayama C, Aihara M, Iwase A, Araie M.
Invest Ophthalmol Vis Sci. 2012 Mar21;53(3):1499-505.