空腹時血糖値レベルと長期的な白内障の発生率および進行

この研究は、空腹時血糖値と長期的な白内障の発生率および進行との関連性を評価するために実施されました。

この研究では、49歳以上の合計3,654人において、空腹時血糖値のベースラインが測定され、そのうち2,454人で、5年後および(または)10年後に同項目が再調査されました。
また、被験者は、それぞれの外来において、写真用レンズを用いて白内障の発生および進行が評価されました。

そして、これらの結果より、空腹時血糖値のベースラインと、皮質白内障、核白内障、後嚢下(PSC)白内障の発生率と進行の関連性が、離散的ロジスティック回帰および変化点モデルという手法を用いて評価されました。

潜在的交絡因子(※1)を調整した後、空腹時血糖値ベースラインは、血糖値レベル6.0mMを閾値として皮質白内障の10年後の発生率に関係していました(空腹時血糖6.0 mM以上と空腹時血糖6.0 mM以下と比較した場合、オッズ比 [OR] 1.79,、95% 信頼区間[CI] 1.25-2.57)。

また、空腹時血糖が1.0mM増加するごとに、閾値なしで、より高い5年の後嚢下白内障の進行(OR1.25、95%CI:1.15-1.35)、10年後の皮質白内障の進行(OR1.14、95%CI:1.01-1.27)、10年後の核白内障の進行(OR1.20、95%CI:1.01-1.43)に関係していました。

そして、この主として糖尿病でない高年齢の集団において、空腹時血糖値ベースラインは、皮質白内障の長期的な発生率と3つの白内障サブタイプすべての長期的な進行に関連していました、と、結んでいます。

もちろんこの研究も日本人を対象としたものではありませんので、この結果をそのまま日本人に当てはめるわけには行きませんが、血糖値のコントロールを厳密にすることは、白内障発症の予防につながるかもしれません。


※1:潜在的交絡因子
当院ホームページ「トピラマート服用に伴う緑内障発症のリスク」の脚注をご参照ください

引用文献:Fasting blood glucose levels and the long-term incidence and progression of cataract -- the Blue Mountains Eye Study.
Kanthan GL, Mitchell P, Burlutsky G, Wang JJ.
Acta Ophthalmol. 2011 Aug;89(5):e434-8. doi: 10.1111/j.1755-3768.2011.02149.x. Epub 2011 Apr 1.