新しい角膜内皮移植術(DMEK)に続発する緑内障

今回ご紹介する研究は、DMEK(※1)に続発する緑内障の発生率および原因についてです。
研究デザインは、三次医療機関における無作為化されていない前向きコホート研究です。

緑内障の発生率は、フックス角膜内皮ジストロフィー(※2)(260眼)あるいは水疱性角膜症(15眼)に対してDMEKを施行した1眼目からの連続する275眼において評価されました。

手術後の眼圧(IOP)が24 mm Hg以上に上昇した場合、あるいは手術前のベースラインから10 mm Hg以上上昇した場合に、ここでは緑内障と定義しています。

緑内障の原因を可能な範囲で確認し、22(+/-13)ヶ月の追跡期間中、最高矯正視力(BCVA)、角膜内皮細胞密度(ECD)および術後経過を記録しました。

結果は以下のとおりです。
結論からいえば、18眼(6.5%)がDMEK後に術後緑内障を発症し、7眼(2.5%)に先在する緑内障の悪化がありました。

11眼(4%)で新たな眼圧上昇を示し、その主な内訳は、気泡による機械的な隅角の閉塞(2%)、ステロイド反応 (0.7%)、周辺虹彩前癒着(0.4%)、原因不明(0.7%)でした。

うち2眼(0.7%)はDMEK後に緑内障手術を要しました。

6か月後には、対象の眼において最高矯正視力(BCVA)が得られ、うち81%は視力が0.8以上出ていました。角膜内皮細胞密度(ECD)は1660 (+/- 554) セル/mm2でした。

DMEK後の緑内障は、一般的に合併症といえるでしょう。これを防ぐには、有水晶体眼中に残った手術後の気泡を30%まで減らし、患者に合ったステロイド療法を適用し、デスメ膜移植片の分散を回避することが有効な方法になり得ます。

そして、特に隅角支持有水晶体眼内レンズ手術を施行した眼では、手術後の数か月は綿密な眼圧モニタリングが必要でしょう、と結んでいます。

これは海外での研究結果ですが、DMEKの手術を受けた患者さんは、主治医の指示に従って眼圧の測定を続けることをお勧めいたします。

※1: DMEK
日本では、水疱性角膜症が適応の術式で、デスメ膜と角膜内皮細胞層のみを交換する新しい角膜内皮移植術のことです。
デスメ膜とは、角膜実質層の下にある膜で、角膜実質層と角膜内皮層をしっかりつなぎとめる働きをしています。

※2: フックス角膜内皮ジストロフィー
角膜の内側の内皮細胞に異常を来たし、角膜のはれを生じたりするため、視力に影響してきます。 欧米に多く、日本人には少ないのが特徴です。

引用文献:
Causes of glaucoma after descemet membrane endothelial keratoplasty.
Naveiras M, Dirisamer M, Parker J, Ham L, van Dijk K, Dapena I, Melles GR.
Am J Ophthalmol. 2012 May;153(5):958-966.e1. Epub 2012 Jan 28.