緑内障チューブシャント手術とトラべクレクトミーの術後5年間の治療成績

今回ご紹介する研究は、緑内障チューブシャント手術(※1)とトラべクレクトミー(※2)の術後5年間の治療成績の報告です。
この研究は、17の医療機関によるランダム化臨床試験です。

研究の対象となった患者は、18~85年前にトラべクレクトミーの手術歴または眼内レンズ挿入術を伴う白内障摘出歴がある患者で、あらゆる緑内障治療薬を投与しても眼圧(IOP)が18 mm Hg 以上40 mm Hg以下のコントロール不良な緑内障患者です。

対象となった術式は、緑内障チューブシャント手術もしくはマイトマイシンC([MMC]; 0.4mg/mL 4分間投与)を併用したトラべクレクトミーで、主な結果判定項目は、眼圧、視力、薬物療法の追加、および、手術の失敗(眼圧が21 mm Hg以上もしくは眼圧が20%下がらなかった、眼圧が5 mm Hg以下となった、緑内障の再手術、失明)で、緑内障チューブシャント手術群として107眼、トラべクレクトミー群として105眼、合計212人の患者の212眼が登録されました。

結果は、以下のとおりです。
5年後の緑内障チューブシャント手術群の眼圧は14.4 +/- 6.9 mm Hg、トラべクレクトミー群で12.6 +/- 5.9 mm Hgでした(有意差なし)。
必要とする緑内障治療薬の数は、緑内障チューブシャント手術群で1.4 +/- 1.3、トラべクレクトミー群で1.2 +/- 1.5でした(有意差なし)。
5年間の累積手術失敗率は、緑内障チューブシャント手術群で29.8%、トラべクレクトミー群で46.9%でした(有意差あり)。
緑内障治療のための再手術の割合は、緑内障チューブシャント手術群で9%、トラべクレクトミー群で29%でした(有意差あり)。

このように、5年後の眼圧下降および追加する薬物療法に関しては、両方の手技において同様な結果となりました。
しかしながら、緑内障の再手術は、緑内障チューブシャント手術群よりMMC併用トラべクレクトミー群で、より頻回に必要でした。

以上の結果より、この研究では、術後5年間の緑内障チューブシャント手術は、MMC併用トラべクレクトミーよりも高い成功率であったとしています。

※1:緑内障チューブシャント手術
房水の流出路を人工的な素材により確保し,流出路の閉塞をきたさない手術。日本では、2012年 4 月より保険適用となっています。

※2:トラべクレクトミー
緑内障患者に対するトラベクレクトミー(※1)~結膜下にベバシズマブを注射した群とマイトマイシンC(MMC) を併用した群の比較~
をご参照ください。

引用文献:
Treatment outcomes in the Tube Versus Trabeculectomy (TVT) study after five years of follow-up.
Gedde SJ, Schiffman JC, Feuer WJ, Herndon LW, Brandt JD, Budenz DL; Tube versus Trabeculectomy Study Group.
Am J Ophthalmol. 2012 May;153(5):789-803.e2. Epub 2012 Jan 15.