アジア人と白人における眼瞼挙筋腱膜上の眼窩隔膜の付着部位
今回ご紹介する研究は、アジア人と白人における眼瞼挙筋腱膜(※1)上の眼窩隔膜(※2)の付着部位、および眼窩脂肪下端の解剖レベルでの特性を明らかにすることを目的として行われました。
研究対象は、ホルマリンで固定した上眼瞼の全層を矢状切断(※3)した10体のアジア人の検体(平均死亡年齢78歳; 年齢層68~89歳)の18枚の上眼瞼および7体の白人の検体(平均死亡年齢88歳; 年齢層78~101歳)の11枚の上眼瞼が用いられました。
また、研究方法は眼瞼挙筋腱膜前層の遠位端を起点として、上部瞼板縁から眼瞼挙筋腱膜上の眼窩隔膜の付着部位までの距離を測定、集計するというものでした。
さらに、上部瞼板縁から眼窩脂肪の下端までの距離も、同時に測定、集計されました。
結果は、以下のとおりでした。
上部瞼板縁から眼瞼挙筋腱膜前層の遠位端までの平均距離は、アジア人で4.44mm、白人で3.71mmでした。(p=0.412)
また、上部瞼板境界から眼窩脂肪までの平均距離は、アジア人で1.90mm、白人で3.17mmでした。(p=0.173)
この研究によって、アジア人と白人において、眼瞼挙筋腱膜上の眼窩隔膜付着部位から上部瞼板縁までの距離は、類似していることが明らかにされました。
しかしながら、統計的に有意でありませんが、アジア人では白人ほど眼窩脂肪が拡張していない傾向があることも分かりました。
この研究も、日本人の眼瞼下垂の手術をより正確、安全に実施することに役立っています。
※1:眼瞼挙筋腱膜
まぶたを上げ下げする筋肉の末端の膜のことです。
※2:眼窩隔膜
上眼瞼の臨床解剖のページにある拳筋complexの2.腱膜(8)をご参照下さい。
※3:矢状切断
体を前後に貫く向きに切断したり、断層像をとったりすること。
引用文献:Ophthal Plast Reconstr Surg. 2010 Jul-Aug;26(4):265-8.
Orbital septum attachment sites on the levator aponeurosis in Asians and whites.