アジア人の眼瞼挙筋腱膜上にある眼窩隔膜の結合部

今回ご紹介する研究は、瞼板上部辺縁部に関連した眼窩脂肪体と眼窩隔膜(※1)、および眼瞼挙筋腱膜(DEALLA)(※2)の前層の遠位端の解剖学的関係を検討することを目的として行われました。

この研究では、11人のアジア人の患者(平均年齢、76.5年) の22枚の上眼瞼および7体のアジア人(平均年齢、81年)の検体の10枚の上眼瞼の標本が用いられました。

生体内においては、すでに、眼窩隔膜とDEALLA、眼窩脂肪体および瞼板上部辺縁部の関係は、上部眼瞼形成術中に、研究済みでしたので、この研究では、検体において、眼窩隔膜が肉眼で見えるようにDEALLAから削除され、また、瞼板上部辺縁部からDEALLAまでの距離が、3ヶ所で測定され、その結果が比べられています。

結果は、以下のとおりです。

生体内において、DEALLAは、常に瞼板上部辺縁部上に位置しており、眼窩脂肪の下縁は常にDEALLAより下方に、そして、瞼板上部辺縁部の近くにありました。
また、4枚の眼瞼において、眼窩脂肪の側面は、瞼板上部辺縁部を越えて拡張していました。

検体において、瞼板上部辺縁部からDEALLAまでの平均距離は、中心に3.0mm、内側に3.7mm、そして横方向に0.9mmでした。
また、3つの検体では、眼窩隔膜および挙筋腱膜の合流する部分は、側面部で眼瞼板に達しました。

先の研究により明らかであった、アジア人の中の挙筋腱膜上の眼窩隔膜付着物は、生体内では、瞼板上部辺縁部上に位置しているように見えるものの、眼窩脂肪は時々瞼板に達して、DEALLAを越えて伸びていることに加え、この研究により、いくつかの検体では、眼窩隔膜および挙筋腱膜の合流する部分は、瞼板の側面に沿って位置していることが明らかになりました。


※1:眼窩隔膜
当院ホームページ→学会・論文→論文→上眼瞼の臨床解剖
上眼瞼の臨床解剖のページにある拳筋complexの2.腱膜(8)をご参照下さい。


※2:眼瞼挙筋腱
「平滑筋を含む2層から成る眼瞼挙筋腱膜」の脚注※1をご参照下さい。


引用文献:Ophthalmology. 2009 Oct;116(10):2031-5. Epub 2009 Jul 9.
Orbital septum attachment on the levator aponeurosis in Asians: in vivo and cadaver study.