瞼板へ直接挿入する内側直筋のカプスロパルベブラル筋膜
今月は、柿崎裕彦先生の眼瞼下垂に関する研究成果の中から眼瞼下垂の治療のあり方を変えることにつながった解剖学的研究をご紹介いたします。
この研究は、アジア人において、内側直筋のカプスロパルベブラル筋膜(※1)が瞼板へ挿入していることを明確にすることを目的とし、11人のアジア人(死亡年齢45-96歳)の検体から採取した19枚(右:11枚 左:8枚)の内側眼瞼および眼窩の標本を用いて行われました。
これらのサンプルは、それらの切除と顕微鏡検査の前に10%中性ホルマリンで固定されました。
また、この研究が実施された時点で、内側直筋のカプスロパルベブラル筋膜のどの部分が瞼板に挿入していたか明確ではなかったので、瞼板は、上下眼瞼中の2つの異なる高さで、切開されました。
眼瞼辺縁部と平行な1番目と2番目の切片は、それぞれ上眼瞼辺縁部の1mmおよび5mm、および下眼瞼辺縁部の1mmおよび3mmの場所で採取され、これらの切片は、トリクローム染色されました。
結果として、両方の上下眼瞼からは、以下に上げる同様の発見がありました。
(1)内側直筋のカプスロパルベブラル筋膜が見られる、多くの平滑筋繊維を含んでいた第一の切片は、瞼板の中へ挿入していませんでした。
(2)しかしながら、浅部が瞼板に密接に付着する緻密線維組織の中に入ったホルネル筋の深部は、直接挿入していました。
(3)筋肉のうちのいくらかは瞼板の中で分岐していました。
(4)第2の切片は、内側直筋のカプスロパルベブラル筋膜が瞼板に対して直接挿入をしていました。
この研究によって、アジア人の瞼板は、内側直筋のカプスロパルベブラル筋膜およびホルネル筋によって、内側で支えられていることが明らかになりました。
そして、この研究は、カプスロパルベブラル筋膜および平滑筋から成る「内側眼瞼牽引筋」が、眼瞼と内側瞼板筋との関係にスポットをあて、眼瞼下垂の新しい発症機序を提示し、眼瞼外反症と下部内側眼瞼外反症の治療のあり方を変えることにつながりました。
※1:カプスロパルベブラル筋膜
こちらの脚注※3をご参照下さい。
※2:ホルネル筋
上下の眼瞼からの深頭の一部で、眼輪筋の分泌部のこと。
引用文献:Ophthal Plast Reconstr Surg. 2008 Mar-Apr;24(2):126-30.
Direct insertion of the medial rectus capsulopalpebral fascia to the tarsus.