平滑筋を含む2層から成る眼瞼挙筋腱膜

今回も先月に続き、2005年11月に文献として発表されたものについてご紹介いたします。

この研究は、部分的に独立した平滑筋から構成された2層から成る眼瞼挙筋腱膜(※1)について研究することを目的とし、1972年から91年の間に死亡した12のアジア人の検視体の15の上眼瞼について分析されました。

15の眼瞼のうち9眼瞼は、上眼瞼の後部は眼瞼挙筋腱膜の構成成分を観察するために取り除きました。
そして、残りの6眼瞼の全層が眼瞼挙筋腱膜とその周囲の組織の付着部位あるいは連続性を観察するために使用されました。
眼瞼は、その中心を垂直に切開され、サンプルはマッソン・トリクローム染色(※2)および抗平滑筋抗体(※3)で染色され、微視的に検査されました。

結果、マッソン・トリクローム染色によって、眼瞼挙筋腱膜は、2層状の性質を持つことが実証され、その前層は厚く強健な線維組織が特徴で、後層は、前層より薄い線維組織によって構成されていました。
また、両方の層は、共に筋肉構造を含んでおり、後層は前層より多くの筋肉構造を含んでいました。これらを抗平滑筋抗体で免疫染色することで、両方の層の筋肉が平滑筋であることが明らかにされました。

つまり、眼瞼挙筋腱膜は、その近位部に平滑筋成分を含んでいる2つの層により形成されていること、そして、それは眼窩脂肪と眼瞼の前層を主に牽引していること、また、これは、部分的に眼瞼の緊張を規制し、上眼瞼の規律正しい動きに影響を与えていることが明らかになりました。

この解剖学的研究は、その後のより簡易で、安全、成功率の高い新しい手術法の開発に役立っています。


※1 眼瞼挙筋腱膜
 まぶたを上げ下げする筋肉の末端の膜のことです。

※2 マッソン・トリクローム染色
 結合組織の染色法です。
 核を鉄ヘマトキシリンで紫色、細胞質を酸性フクシンで赤色、膠原線維をアニリン青(ライト緑)で青色(緑色)に染め分けます。
 変法がいくつかありますが、基本的には 3 つの色素で染め分けるのが特徴です。

※3 抗平滑筋抗体
 平滑筋に対する自己抗体のことです。自己免疫性肝炎で高率に検出されます。


引用文献:Ophthal Plast Reconstr Surg. 2005 Sep;21(5):379-82.
The levator aponeurosis consists of two layers that include smooth muscle.