眼瞼下垂手術における内側眼瞼裂の矯正不足の原因

今回は、少々前の研究ですが、私も執筆者のひとりとして加わり、2004年5月に文献として発表された研究結果についてご紹介いたします。

この研究は、眼瞼下垂手術後に時折発生する内側眼瞼裂の矯正不足の原因を確認することを目的として、6体の東洋人の検体、4人の男性および2人の女性(死亡平均年齢、77.5歳)の12の上眼瞼について調査したものです。

・挙筋は前外側に位置していた。
・内側角の分岐角度は、側角のものよりはるかに急であるものの、側角は内側角より広範囲に広がっていた。
・腱膜の上部が拡張する先の下縁は側角を広範囲にカバーしていたが、内側角は、ほんの少ししかカバーしていなかった。

よって、ほとんどの内側角は、腱膜の中間部および下部が拡張する先の薄い構造のみによって構成されることになります。

つまり、内側角側と側角側を同様に固定してしまうと、内側角は、側角より構造上弱く、それほど動的ではないので、腱膜の側角側は、内側角側より強く引かれてしまい、時折、眼瞼下垂外科後の内側眼瞼裂の矯正不足の原因となります。

私たちは、これを防ぐために、内側部は、側角側より広く固定するべき、と、結論づけました。

今回ご紹介した研究は、かなり微細な解剖学的内容で、一般の読者の皆様にとっては、一見地味に見える研究であると思います。しかし、このような研究の積み重ねで、少しずつ手術の精度を高めることができるのです。


引用文献:
Ophthal Plast Reconstr Surg. 2004 May;20(3):198-201.
Causes of undercorrection of medial palpebral fissures in blepharoptosis surgery.