原発開放隅角緑内障と偽落屑緑内障の危険因子の研究

2011年8月、ギリシャにおいて実施された原発開放隅角緑内障(POAG)と偽落屑緑内障 (PEXG)(※1)の危険因子を明らかにするための研究の結果が発表されました。

 この研究は、任意に選択された2554人の60歳以上の被験者を対象に、以下の3つの群間比較を行なっています。

(1)開放隅角緑内障(OAG)の被験者群と緑内障ではない被験者群(コントロール群)との比較
(2)POAGの被験者群と偽落屑物質(※2)のない被験者群(コントロール群)と比較
(3)PEXGの被験者群と偽落屑物質がある群(コントロール群)との間での、人口統計学、ライフスタイル、目に関する各項目、全身性要因についての比較

 結果は以下の通りでした。

(1)少なくとも1つの有水晶体眼(※3)がある人において、開放隅角緑内障(OAG)発症の確率の高さと眼圧の高さ、偽落屑物質があること、冠動脈バイパスあるいは血管手術の手術歴および中程度から高度の近視は、深く関連していました。
また、年齢は、危険因子として有意に関連していました。
(2)POAGと、年齢、眼圧の高さ、冠動脈バイパスあるいは血管手術の手術歴、およびインスリンによる糖尿病の治療歴において関連性が見られました。
(3)PEXGは、眼圧上昇とのみ関連性が見られました。

 そして、以下のように結論づけています。

(1)眼圧上昇は、POAGとPEXGの両方に関連した唯一の危険因子である一方、中程度から高度の近視は、両方の緑内障の危険因子となるかどうか判断はできなかった。
(2)全身性の血管疾患およびそれらの治療歴はPOAGのみに関連していた。
(3)2つの一般的なOAGの発症機序において、これらの違いが何を意義するかは、さらに調査されるべきである。

 残念ながら、今回の研究では、偽落屑緑内障の発症要因は、眼圧の上昇以外に明らかにできるものはなかったようです。
 しかしながら、開放隅角緑内障の発症と関連のある因子は、いくつか明らかになっています。
 勿論、日本人において、十分な検討がなされたわけではありませんが、40歳以上である方、中程度から高度の近視のある方、または、全身性血管疾患およびその治療歴のある方は、定期的な眼科の受診をお勧めいたします。


※1:偽落屑緑内障
虹彩や水晶体前嚢に白い沈着物が付着して発症する緑内障のことです。

※2:偽落屑物質
高齢者の片眼もしくは両眼の瞳孔縁にフケのような白い物質が付着していることがあります。これを偽落屑物質と呼びます。

※3:有水晶体眼
ふつうの眼のこと。白内障の手術などで水晶体を摘出した眼は、無水晶体眼、人工水晶体を入れた場合は、人工水晶体眼といいます。


出典:Am J Ophthalmol. 2011 Aug;152(2):219-228.e1. Epub 2011 Jun 12.
Risk factors for primary open-angle glaucoma and pseudoexfoliative glaucoma in the Thessaloniki eye study.