緑内障とミトコンドリア
ミトコンドリアはほとんどすべての生物(動植物や菌類など)の細胞に広く含まれている細胞内構造物の一つです。
現在、酸化ストレスの制御と緑内障の発症予防に関する研究や、原発性開放隅角緑内障と線維柱帯(※)のミトコンドリアの損傷との関係をめぐる研究が進められている中、酸化ストレスの制御と緑内障に関する新しい研究成果が発表されました。
その論文によると、2種類の違うタイプの緑内障治療薬の抗酸化作用を見た試験の結果、薬剤Aは線維柱帯全体に抗酸化作用を持っていますが、薬剤Bは、線維柱帯のミトコンドリアが、まだ傷ついていない時でないと抗酸化作用を示さなかった、とのことです。
また、原発性開放隅角緑内障において線維柱帯のミトコンドリアの損傷が大きく関与している事を証明するためには、この研究結果に加えて、ヒトの線維柱帯のミトコンドリアの働きを損なう緑内障原因遺伝子の変異体が発見されることなどが必要でしょう、としています。
今回は、少々専門的な話になりましたが、現在、原発性開放隅角緑内障の進行と共に線維柱帯の働きが悪くなることは分かっているものの、その原因は、わかっていません。
このような遺伝子レベルでの緑内障の研究が更に進み、治療へとつながってほしいものです。
※線維柱帯
房水(眼球を満たしている体液のこと)が、眼から流れ出る経路上にあるくさび型の構造体のこと。
眼内圧の上昇と関連した緑内障では、房水の流出に対する抵抗の原因は、主として線維柱帯にあると言われています。
引用文献:
Arch Ophthalmol. 2011 Jan;129(1):48-55.
Ability of dorzolamide hydrochloride and timolol maleate to target mitochondria in glaucoma therapy.