ステロイド緑内障におけるトラベクロトミーの成功率

2011年7月に、日本の17の臨床施設において1997年から2006年の間にトラベクロトミー(※1)を施行したステロイド緑内障(※2)患者について調査された日本人研究者による研究成果が発表されました。

この研究では、手術の失敗を
・緑内障の再手術が必要で、光覚(※3)がなくなるまで視力の低下がみられた
・眼圧が21mm Hg以上(基準A)、18mm Hg以上(基準B)であること
と定義され、トラベクロトミーを施行した108人の『原発開放隅角緑内障(POAG)患者』と、同様にトラベクロトミーを施行した42人の『ステロイド緑内障患者』の間で、手術の結果が比較されました。

手術後3年間のトラベクロトミー成功率は

〔基準A−眼圧が21mm Hg以上〕
・ステロイド緑内障の患者群で78.1%
・POAGの患者群で55.8%

〔基準B−眼圧が18mm Hg以上〕
・ステロイド緑内障の患者群で56.4%
・POAGの患者群で30.6%

という結果になりました。

また、ステロイド緑内障のトラベクロトミー失敗を招く要因は、硝子体切除術の前歴があることと点眼以外のコルチコステロイドの投与、という結果も得ました。

結論としてこの文献では、トラベクロトミーは、ステロイド緑内障の患者さんの眼圧を21mm Hg以下にコントロールすることに有効な手段としています。

ステロイドというと、何かと悪者にされることが目立つ薬剤ですが、その発明以来、人類に多くの福音をもたらしてきた薬です。なおかつ現在では、安全性の高い製剤、投与法も開発されていますので、ステロイドによって安全に症状をコントロールすることが可能となっています。

しかしながら、今回取り上げたステロイド緑内障を早期に発見し、トラベクロトミーの適用を遅らせるためにも、内服、点眼等の局所投与を問わず、長期にステロイドで症状をコントロールしている方は、定期的に眼科を受診することをお勧めいたします。

※1:トラベクロトミー
線維柱帯を切り開く手術で生理的房水流出路の機能回復を目的として行われる手術のことです。小柱除去術、線維柱帯切開術とも言います。
(線維柱帯、房水については、2011年2月のトピックス「緑内障とミトコンドリア」の脚注を御覧ください)

※2:ステロイド緑内障
治療に使ったステロイド剤が原因で、続発的に起こる緑内障です。原発性緑内障のときと似た症状があらわれます。

※3:光覚
光の刺激に対する感覚のこと。一般に光の強弱(白黒)を認識する感覚のことをいいますが、色覚を含める場合もあります。

出典:Am J Ophthalmol. 2011 Jun;151(6):1047-1056.e1. Epub 2011 Mar 10.
Success rates of trabeculotomy for steroid-induced glaucoma: a comparative, multicenter, retrospective cohort study.