出産育児一時金の医療機関への直接支払い実施延期

出産育児一時金とは、協会けんぽなどの医療保険から支払われるお産の費用です。現在は、子ども1人の出産につき42万円(産科医療補償制度3万円を含む)が支払われます。出産育児一時金は、昨年9月までは原則としてお産が終わってから申請により妊婦さんなどに支払われていたために、医療機関にいったんお産費用の全額を支払わなければなりませんでした。

 これを少子化対策の一つとして、厚生労働省は、若い両親がお産費用を用意しなくとも出産できるように、出産育児一時金を医療機関に直接支払うように制度を昨年10月から改定しました。しかし、この制度改定が急だったために、資金的に対応できない医療機関が発生してしまいました。直接支払いになると医療機関にお金が入金されるのは2ヶ月後となるため、この間の職員への給料支払いなどの経営資金を新たに確保しなければならないためです。こうした点への対策が不十分でした。

 そのため、この制度を全面実施した医療機関は、2月時点で診療所では29%、病院では75%にすぎません。厚生労働省はこうした事態を受けて来年4月1日まで制度全額実施を延期しました。そもそも、一時金とはいえ医療機関での窓口での多額の出産費用を不要にするのが理想なはずです。しかし、そうした政策を実施するに当たっては、他に及ぼすマイナス影響を最小限度に抑えることも当然必要なことです。今回の全面実施延期は、そうしたとるべき当然の対応を怠った厚生労働省に責任があるといえそうです。(M)