中国製ギョーザと食の安全
昨年末から今年1月にかけて兵庫や千葉で中国製ギョーザによる中毒事件が発生しました。真相はまだ明らかになっていませんが、この事件は、私たちに食の安全についてあらためて考えさせるきっかけとなっています。
まず、冷凍の中国製ギョーザのような調理冷凍食品の輸入量がこの10年間で8.7倍になっていることには驚かされます。ギョーザをはじめロールキャベツ、牛すじ、お好み焼きなどにもおよび、消費者が手軽に利用するだけでなく学校給食にも使用されているようです。こうした輸入食品が増えるなか、食料自給率は低下する一方で、現在は39%にすぎません。
しかし、このように増大する輸入食品の安全を管理する検疫体制が追いついていません。輸入食品の検査率は10%で、それもサンプル検査をするだけといいます。残留農薬も検査しているようですが、調理した冷凍食品は検査対象外だというのです。それもそのはず、検査体制がおそまつで全国の13の検疫所に300人ほどの食品衛生監視員がいるにすぎないといいます。
今回の事件では、行政や企業の対応の遅れも指摘されています。最初の中毒事件が発生したのは昨年の12月28日でしたが、公表されたのは今年1月30日です。行政間の連絡や企業の危機管理意識に問題があったことも指摘されています。
このように、今回の事件は、日本の食の安全について様々な問題点を明らかにしていると言えますが、消費者に問題はなかったのかということもあります。より安全な食品を安く手に入れたいというのはわかりますが、安全にはコストが伴うということも事実です。コスト低下だけが優先すると、兵庫で起こった脱線事故のように、安全が犠牲になるという痛ましい事故を体験しています。食の安全も同じです。コストが安いことを理由に輸入食品が増え、日本の農業や地元の食品産業が衰退しています。本当にこれでいいのでしょうか。(M)