眼の進化

9月号でお知らせしたように、生物の眼がどのように進化してきたのか、順に追ってゆきたいと思います。今月は、もっとも原始的で基本的な眼を持つ扁形動物(プラナリア)の眼についてお話します。

 カメラの歴史がそうであるように、生物の眼の歴史も、やはり「ピンホール」から始まりました。「ピンホール」とは、下図のように、小さな点にいったん光を集中的に集めることによって、像を映し出す方法です。ピンホールの特徴は、なんといってもレンズがないことです。ただ単に、小さな穴が開いているだけです。簡単な構造だけに、やはり欠点が多いのも事実です。先ほど、光を集中させる、と書きましたが、正確に述べるのならば、集中させるのではなく、光を選択的に遮断することによって結果的に像を得ています。したがって、光の量は極端に少なくなります。実際に、ピンホールカメラの露出時間は、レンズカメラの何百倍もの時間、露出しておかなければなりません。また、ピンホールの穴が小さければ小さいほど、正確な像を得ることができるわけですが、小さくなれば光の量が減ってしまいます。小さすぎても、光が持つ波の性質によって、かえってぼやけてしまったりします。このように、ピンホールによって得られる画像には限界があります。独特の画風になるというので、あえてピンホールカメラを用いるカメラマンも少なくありません。しかし、プラナリアにとってみれば、そんなことは言ってられないわけで、相当苦労しているものと思われます。このような構造の眼を、専門的には「色素眼杯」といいます。

 ちなみに、プラナリアは、切っても切っても再生する、なんだか愛くるしい眼をしている、というので有名な生物ですね。

(K)